ナポリからのGIFT

少しでもナポリに興味を持つ人が増えれば、と思い、書いています。ただ、稀にプライベートの事も。

カジェホン去りしナポリ、新しいチームへ

 

「残念だが、今日から僕たちの道は別々のモノとなる」。

 

カピターノ、ロレンツォ・インシーニェInstagramで投稿した写真に添えられた、最初の一文だ。

 

遂にこのときが訪れた。ホセ・マリア・カジェホンレアル・マドリーからナポリに渡って7年間、サン・パオロのピッチ上で縦横無尽に駆け回り、一切の怪我もせず、いつどんな時もナポリのために戦ってくれたこのスペイン人は、ナポリを離れることになった。

 

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7年所属したナポリを去ったカジェホン

 

ナポリ加入以前、華やかなレアル・マドリーにおいて、カジェホンはいわば脇役としてその価値を証明してきた。ジョゼ・モウリーニョから重宝され、クリスティアーノ・ロナウドや、それこそ今では憎きゴンサロ・イグアインのような名だたるビッグネームが揃う中においてである。

そんなカジェホンナポリが出会ったのは、今から7年も前の話だ。同じスペイン人のラファエル・ベニテス就任を機に、初めて国外でプレーをすることとなった。与えられた背番号は「7」。かのエディンソン・カバーニが背負った番号だ。ナポリの期待を一身に背負ってきたアイドルの後を継ぐというのは、簡単なことではなかったと想像できると同時に、カジェホンにその背番号が渡ったという事は、いわば「新しいナポリ」が始まったことも意味したのであった。それこそ、ポジション柄カバーニの後釜となったイグアインらと共に、である。

事実、ベニテス就任によって、カウンター主体だったワルテル・マッツァーリ時代から戦術が変更。現在のようなポゼッション型のチームへと舵を切ることになる。

 

そして、そのポゼッション主体のチームで、カジェホンは7年間主力であり続けた。ベニテスに始まり、マウリツィオ・サッリ、カルロ・アンチェロッティは絶対的な主軸として重宝し、現在のジェンナーロ・ガットゥーゾになってからはややターンオーバーが増えたものの、それでもレギュラーポジションは変わらなかった。

 

ナポリを見ていない多くの人からすれば、必ずしもカジェホンは、チームの主役の1人だったとは映らないかもしれない。バンディエラだったマレク・ハムシク、アイドルのドリース・メルテンスナポリ生え抜きのインシーニェといったタレント達は、そのプレースタイルからもメディア映えし、注目を浴びる存在だったからだ。

カジェホンはメディアの前で多くを語らなかった印象もあり、更には今ではどの選手も使っているSNS(InstagramTwitter)の更新も皆無。プレースタイル的にも、前述した選手達のような、華やかなボール捌きを武器とするような選手ではなかった。

 

だが、ナポリを応援し続けている人たちは皆分かっているはずだ。カジェホンがこのチームにどれだけ貢献してきたのか。僕らさえ分かっていれば十分なのだ。カジェホンは自ら表舞台にたって主張するようなタイプではないのだから。

 

ウィングながら上下動を繰り返し、守備にも貢献する運動量、さらには十八番の鋭い飛び出し。特に後者においては、彼の右に出る者は、おそらく世界中を探しても誰一人としていないだろう。

それだけではない。『transfermarket』のデータによると、ナポリに在籍した7年で349試合出場し、82ゴール、78アシストを記録している。数字の面でもケチを付けるところは殆んどない。

先日、メルテンスナポリ史上最多得点記録を更新した際にも触れたが、彼の得点を最も多くをお膳立てしてきたのもカジェホンだ。

 

napoli9627.hatenablog.jp

 

これだけの素晴らしい活躍をしておいて、だれが脇役などと言わせようか。

 

これからナポリで右サイドを務めるプレイヤーは要求が高くなるだろう。単にカットインしてシュートに持ち込むというような、典型的なウィンガーには務まらない仕事をこなしてきたカジェホン他の同ポジションの選手とは一線を画する選手だった

彼と競わせるために、過去に何人もの選手を補強してきた。エマヌエレ・ジャッケリーニに始まり、アダム・ウナス、シモーネ・ヴェルディ、そして現所属のマッテオ・ポリターノにイルビング・ロサーノ…。だが、現状彼の座を脅かすようなプレーをしてきた選手は見つからなかった。

 

そして、そんな中でも退団してしまうカジェホン。彼らの到来と共に始まった「新しいナポリ」の戦いは、イグアインもとうの昔に去り、ハムシクも抜け、更にはカジェホンも去るとなると、いよいよ終焉の時がやってきたのだと実感させられる。向かう先に明るい未来はあるのか、よくわからないのが本音だ。

 

だが、否が応でも、カジェホンが去ったナポリはいよいよ別のチームへと移り変わるらなけらばならない。サイクルを支えてきた「ちびっこトリデンテ」も解体され、いわゆる「得意の形」「ナポリの十八番」が相手の胸元をえぐる必殺技になることは滅多になくなるだろう。

莫大な移籍金でヴィクター・オシメンがリールから加わったが、彼はこれまでのナポリとは気色の異なるプレイヤーであることは、一目瞭然。それこそ新チームの目玉候補だ。彼を経験豊富なメルテンスやインシーニェが指南して、これまでとは別の「新しいナポリが形成されていくだろう。そしてそこには、カジェホンと共にチームに貢献してきた、アランも、アルカディウシュ・ミリクも、ファウジ・グラムもおそらく居ない。躍進を遂げたサッリ・ナポリの面々の半数以上はチームを去ることになる

 

 

時代は移り変わっていく。カジェホンがいなくなっても、ナポレターノ達はナポリを応援し続けるだろう。だが決して、チームの主役として働いてきたカジェホンの姿は、忘れることはない。カピターノであるインシーニェは、冒頭に触れたInstagramの投稿に添えた文の最後に、こう記している。

 

「我が友よ!幸運よ!」

 

派手を好まないであろうカジェホンが、このコロナ禍においてひっそりと去っていくのもまた、彼らしいと言えば彼らしいが、ナポリファンは皆同じ思いのはずだ。